28/08/2020
高林先生から。
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安倍晋三の首相辞任会見を見たが、明らかに生気がなく、呂律も回らず、体調が悪いことがはっきり窺われた。
彼の辞任会見は、《病の再発した総理が、国民に迷惑をかけないために、権力に執着せず謙虚な態度で職を退く》と演出したものだった。だったら連続在任日数が歴代最長となる8月24日を待つべきではなかったわけで、最後まで自分本位だったのだが、おそらく(追いつめられての投げ出しではなく)《名誉ある退陣》という花道を政権・自民党幹部は準備していたのだろう。
(BBC)https://www.bbc.com/japanese/53944124
(NHK)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200828/k10012588961000.html
しかし現実には、官邸主導で混乱ばかり生んできた新型コロナウイルス対策や、甚だしい権力私物化を明るみにした「桜を見る会」問題への酷評、大学入試改革の迷走などから支持率が急落し、株価操作の産物である「アベノミクス」の化けの皮は剥がれた。「桜を見る会」問題に限らず、森友・加計問題はくすぶり続け、検察への統制を強化するための法改正の企ては失敗し、自ら大規模な選挙資金を投入して支援した側近の河井元法相夫妻が逮捕されてしまい、政権を降りたら政治腐敗疑惑による逮捕・訴追の可能性もあり得ると噂されるほどだ。さらには自身の肝煎りの東京五輪は延期されたばかりか開催自体が危ぶまれている。このように、「驕れる者は久しからず」の言葉通り、このところ安倍政権はやることなすこと裏目に出る状況に陥っていた。かなり精神的に追い込まれての辞任であったことは疑いない。安倍首相の表情や話しぶりからは、気力の喪失と悔しさがない交ぜになっているように見えた。
「拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極みだ。ロシアとの平和条約、憲法改正、志半ばで職を去ることは断腸の思いだ」と安倍は語っていた。おそらく本気で悔しいのだろう。裏返せば、8年の長きにわたって専横を恣にしてきた安倍政権も、排外的ナショナリズムを煽るだけ煽りながら(否、むしろそれゆえに)「結果を出すこと」はできなかったわけである。そのことは彼の後任者をして、多少なりとも慎重な施策を余儀なくさせるかもしれない。
とはいえ、言うまでもなく安倍晋三は「何もできなかった」のではない。彼の長期政権の間に、日本の建前上の「戦後民主主義」「平和主義」はすっかりボロボロになった。
正真正銘の憲法改正は実現しなかったかもしれないが、閣議決定による「解釈改憲」と安保法制の成立、武器輸出三原則の換骨奪胎により、日本国憲法の「平和主義」はすっかり空洞化し、9条は死文化した。内閣による行政解釈を最高法規たる憲法に優越させることに成功したことは、立憲主義と三権分立を破壊するという意味で、改憲そのものよりかえって悪いとも言えよう。これにより、行政の解釈を法に優先させる安倍政権の権威主義的体質には全く歯止めが効かなくなった。
また、安倍政権は「拉致問題」を徹底的に利用して、朝鮮学校を高校就学支援金制度から完全排除する行政決定を皮切りに反朝鮮政策を強力に推進し、2018年からの朝鮮半島平和プロセスも韓国の文在寅政権を揺さぶることで徹底的に妨害した。のみならず、いわゆる歴史修正主義と排外主義、韓国や中国への敵対姿勢や「領土問題」をことさらに煽ってきた(その裏面で推進した「北方領土問題の解決」も、日ソ共同宣言に立ち戻ることを徹底できなかったために、プーチンに見限られ失敗した)。これまで何度も書いてきたように、安倍政権のもとで韓国・朝鮮やアフリカ諸国など格下と看做す国々に対する威圧的な外交姿勢は酷くなる一方であった。このような対決的外交は「拉致問題の解決」の糸口を失わせ、韓国との関係を破壊し、アフリカからの信用を損なったばかりか、社会の中に嫌韓・嫌朝やヘイトスピーチを蔓延させてしまった。今や《リベラル》でさえも韓国・朝鮮に対する無理解と蔑視を公然と口にする有様である。
安倍政権が終わったからといって、安倍政権のもとで破壊されたものは、取り返しがつかないほど大きい。そして、それは安倍晋三に高支持を与えてきた我々日本人の責任でもある。
そして、安倍の後継として名が挙がるのは、差別的で下品極まりない浪費家のボンボン副総理、詭弁を恣にしてきた官房長官、威圧的な外交姿勢で日本外交をボロボロにした外交音痴の外相経験者、そして軍事マニア…と、ろくな人物がいない。残念ながら野党にも、植民地主義の歴史に対する無理解と嫌韓・嫌朝は蔓延している。
安倍政権が終わっても、安倍的なものが消え去るわけではない。私たちにとっては、これからが正念場である。
日本の安倍晋三首相(65)が28日、持病の悪化を理由に辞任する意向を記者会見で発表した。