25/02/2026
高市旋風 ― 自民党圧勝、国会における労働者の代表はほぼ消滅
衆議院の解散・総選挙を打ち出した際、高市早苗首相は有権者に対し、「自民党と日本維新の会で過半数の議席を賜れましたら、高市総理。 そうでなければ、野田総理か、斉藤総理か、別の方か。 間接的ですが、国民の皆様に内閣総理大臣を選んでいただくことにもなります。」と述べた。しかし日本の労働者階級にとって、そのいずれも実質的な選択肢ではなかった。残念ながら、2月8日に実施された投票は自民党に決定的な勝利をもたらし、戦後最大級の地滑り的勝利となった。自民党は衆議院465議席中316議席を獲得し、68%という圧倒的多数を確保した。小選挙区では2,780万票(投票総数の49.2%)、比例代表では2,100万票(36.7%)を得たが、投票率56%という条件下では、有権者全体に占める自民党支持はわずか28%にすぎない。
高市は、日本初の女性首相という目新しさに加え、有権者と直接つながれる親しみやすさがあり、灰色のスーツを着たおじさん政治家とは違うと受け止められた。中国政府・中国共産党からの激しい非難、さらには大阪の総領事による「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」との発言に対しても一歩も引かない姿勢を示したことで、強い指導者像を印象づけた。国際舞台でも各国首脳と対等に渡り合い、党の支持率を大きく上回る個人支持率を維持していた。世襲議員でないことも有利に働いた可能性がある。下位中流層出身で努力して上り詰めた人物というイメージは、賃金停滞と物価上昇に直面する時代状況の中で多くの人々に訴えるものがあったのだろう。驚くべきことに、彼女の好感度は近年の政治家の中でも突出しており、若年層ほど支持率が高かった。18〜19歳で86%、30歳未満で85%という数字である。SNSの活用でもこれまでの総理大臣より巧みであった。彼女のYouTube選挙動画は1億2,800万回再生されたとされ、 2024年の石破の2,400万回、最大野党の100万回と比較しても桁違いであった。
選挙前、最大野党であった立憲民主党は世論の空気とずれているように映っていた。反対姿勢を強調する一方で、労働者や中間層が直面する課題に対し、簡潔で十分に練られた政策プログラムを提示できていなかった。そして自らを中道志向と称しながら、その意味を明確に説明できないまま、選挙戦開始直前に日和見的に公明党と合流して新党を結成した。この「合流」は衆議院限定のものであり、参議院議員や全国の選出議員は含まれていない。また、党の一般党員を代表する総会や大会において議論されることもなくにわかに結成されていることからも、この連合は出発点からして破綻を内包していた。両党は長年さまざまな形で選挙上の競合相手であり、支持者同士の間にも強いわだかまりが残っている。新党「中道改革連合(中道)」は236人を擁立したが、過半数を得るにはほぼ全員が当選しなければならず、日本の選挙制度上それはまず不可能と言えよう。なお、中道の共同代表であり元立憲民主党代表の野田佳彦は、自らを保守と称しつつ中道を掲げている。この新党はほとんど無名であり、労働者に訴える綱領もない。政治的心中とも言える合流であった。公明党は将来的に元の形へ分裂すればいくらか延命するかもしれないが、それも時間の問題だろう。比例代表名簿上位を公明党候補に譲るかわりに小選挙区では立憲候補に公明票を回すというトップレベルでの勝手な取り決めのせいで、旧立民勢力は148議席から21議席へと激減し、旧公明は24議席から28議席へと増加した。枝野幸男、安住淳、岡田克也、そしてたびたび党を渡り歩いてきた小沢一郎らベテラン勢が議席を失った。原発や安全保障で従来の立場を後退させた代償である。共同代表の野田と斉藤は辞任したが、党内では旧立民が21、旧公明が28と少数派に転落した。
今回の選挙で自民党は316議席、日本維新の会は36議席を獲得し、合わせて352議席、全体の76%を占めた。中道は172議席から49議席へと大幅に減少し、全体の10.5%にすぎなくなった。ただし得票数を見ると、小選挙区で1,220万票(21.6%)、比例代表で1,040万票(8.2%)であった。連合や公明・創価学会の組織票は動員できたが、以前立民に投票していた無党派層の多くは自民党へと流れた。
左派とみなされる政党は壊滅的打撃を受けた。日本共産党は、これまではほぼ全ての小選挙区に対立候補を立ててきたが、今回は擁立候補小選挙区158人、比例18人にとどまり、沖縄の唯一の小選挙区議席も失い、8議席から4議席へと減少した。得票は、小選挙区で228万票(4%)、比例で250万票(4.5%)。れいわ新選組は9議席から1議席へ激減し、小選挙区25万5千票、比例167万票(2.9%)。したがって、左派政党全体で最大420万票程度である。中道に投票した旧立民支持者の中には自らを左派と考える者もいるだろうが、中道自体は左派ではないし、今後もそうなることはない。
右派では国民民主党が28から27へ、参政党は3から15へ議席を増やした(すべて比例)。とはいえ、現時点で有権者の圧倒的多数を占めるし保守層は、結局なじみのある自民党を選んだ。国民民主党と参政党は自民・維新との連立参加の可能性に言及しているが、高市が彼らを必要とする理由はない。彼女はすでに超多数を持ち、党内の強硬ナショナリストから中道までの多様な勢力をまとめるだけで十分に困難である。しかも所得税課税最低限(壁)の見直し、消費税減税の可能性、外国人労働者・居住者の管理強化といった政策を事実上取り込んでいる。
自民党は根深い金権体質を抱えている。安倍派裏金議員も事実上復帰した。次の不祥事が起きるのも遠くないだろう。中曽根、小泉、安倍らの大勝が後に大きな議席減や敗北につながったように、2009年に鳩山由紀夫率いる民主党が308議席を得たように、高市もいずれ同様の局面に直面する可能性がある。
高市は、選挙時には争点にしていなかった憲法改正に言及しているが、衆院では3分の2超えでも参院では3分の2に達しておらず、国民投票に持ち込むのは難しいだろう。国民の生活よりも改憲や国家安全保障強化を優先すれば、強い反発を招くことになる。実質賃金は4年連続で減少し、家計の食費負担は1981年以来の高水準である。
医療費自己負担引き上げや医療費削減、防衛費をGDP比3〜5%へ引き上げる動きもある。減税措置は具体化していない。対中関係では台湾有事発言をめぐり緊張が高まり、中国は経済的圧力を強めている。対米では5500億ドルの投資が約束されたが、それは国内に使われない可能性がある。
今回の選挙で、いずれの政党も帝国主義的競争そのものに異議を唱える立場を打ち出さなかった。多くの日本人は軍国主義を望んでいない。
中道や左派にとって壊滅的結果となったが、1,630万人は非保守政党に投票した。日本の選挙史において圧倒的勝利は永続しない。若者もやがて現実から学ぶだろう。労組や地域の活動家は落胆するのではなく、職場と地域で日々活動を積み重ね、反動勢力に対抗する現実の力を築く必要がある。選挙は手段の一つにすぎない。