14/06/2015
■いつかは思い出になるけれど■ロワイヤル三軒茶屋201号室
まさか自分がピンクのキッチンで料理をすることになるとは、
1年前は考えもしなかった。
隣の部屋では、リカちゃん人形のような顔をした美少女が
新しい作品のチェックをしているところだろう。
彼女と出会ったのは、去年の夏のこと。
茶沢通り沿いのダイニングバー「Shin-Shin」で出会った。
おつまみは美味しいし、盛り付けも遊び心があってオシャレ。
と思えば、もつ煮込みの食べ放題なんかもある。
何より、カクテル~日本酒まであらゆるお酒が楽しめる
そのお店が私の大のお気に入り。
気さくな店員さんと、趣味のツーリングの話で盛り上がっていた時、
ふらっと入ってきたのが彼女。
店内にいた全員の目が釘付けになった。
顔の造形が整っているのはもちろん、頭のてっぺんからつま先まで
手入れが行き届いていて、メイク・ファッションも計算されていた。
そんな一見近寄りがたい雰囲気の彼女だけど、
話すと耳を疑うようなガサツな言葉づかいだったり
平気な顔して日本酒を何合も空けたり見た目とのギャップが激しくて…
いつの間にかすっかり馴染んでしまった。
彼女は今流行りの動画投稿者というやつで、
主にメイクやヘアアレンジ、ファッションコーディネートを投稿している。
調べてみると、一部では結構な有名人でファンも多いようだ。
自宅で撮影しているらしく、最近このあたりに引っ越してきたらしい。
いつも隙がないお人形さんのような彼女と、平気でTシャツ+ジーパンにスッピンで出歩く私は一見正反対だけれど、不思議と気が合ってすぐに仲良くなった。
私はスタジオで働いていて、撮影や動画編集なんかもやっているから
「じゃあ私がアシスタントやってあげよっか?なんだか楽しそうだし」
なんて、彼女の家に通うようになったんだけど…
その部屋はとにかくピンク!
家具だけじゃなく、元の壁紙やキッチンなんかもピンク色。
よくここまで揃えたなー、っていう感じ。
寝室の一角が撮影スペースになっており、ピンクの壁紙に白いソファ
パステルカラーのクッションに、キラキラの照明。
あまりのこだわりっぷりに、なんだか感心してしまった。
彼女の雰囲気にぴったりなのがまた…何ともいえない。
色使い以外にも、しっかりした独立洗面台があったり
沢山の服や道具を置くためのゆとりもあって
確かにここなら撮影もやりやすそうだ。
そして、通ううちに一つのことに気がついた。
彼女はあんなに手先が器用なのに、家事全般が苦手なのだ!
立派なキッチンがあるのに、冷蔵庫にはレトルト食品や
スーパーのお惣菜の残りものばっかり。
約10畳のLDKも物が雑多に散らばっていて、
整っているのは撮影に使う一角だけという有様。
ついほうっておけずに、食事を作ったり片づけをしたり
なんてことを続けてもうすぐ一年が経とうとしている。
その間に、彼女は本を出版したり、雑誌の取材やテレビに出演したり
一般の人にもずいぶん知られるようになった。
世間での彼女のイメージは、可愛くてオシャレで美容にストイック。
でも、実はガサツで片づけができないズボラ女子なんて…
バレたら世の中の男子諸君がガッカリするに違いない。
そんな彼女のギャップを知っている、ということに優越感を感じちゃって
ついズルズルとお世話係を続けている。
もうすぐ、またあの暑い夏が訪れようとしているけれど、
なんだかんだでこの生活はやめられそうにない。
世田谷区若林2丁目28-24
ロワイヤル三軒茶屋
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