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■いつかは思い出になるけれど■ロワイヤル三軒茶屋201号室 まさか自分がピンクのキッチンで料理をすることになるとは、1年前は考えもしなかった。 隣の部屋では、リカちゃん人形のような顔をした美少女が新しい作品のチェックをしているところだろう。...
14/06/2015

■いつかは思い出になるけれど■ロワイヤル三軒茶屋201号室

 
まさか自分がピンクのキッチンで料理をすることになるとは、
1年前は考えもしなかった。
 

隣の部屋では、リカちゃん人形のような顔をした美少女が
新しい作品のチェックをしているところだろう。
 
 
 
彼女と出会ったのは、去年の夏のこと。
茶沢通り沿いのダイニングバー「Shin-Shin」で出会った。

 
おつまみは美味しいし、盛り付けも遊び心があってオシャレ。
と思えば、もつ煮込みの食べ放題なんかもある。

 
何より、カクテル~日本酒まであらゆるお酒が楽しめる
そのお店が私の大のお気に入り。

 

気さくな店員さんと、趣味のツーリングの話で盛り上がっていた時、
ふらっと入ってきたのが彼女。
 

店内にいた全員の目が釘付けになった。
 

顔の造形が整っているのはもちろん、頭のてっぺんからつま先まで
手入れが行き届いていて、メイク・ファッションも計算されていた。

 
 
そんな一見近寄りがたい雰囲気の彼女だけど、
話すと耳を疑うようなガサツな言葉づかいだったり
平気な顔して日本酒を何合も空けたり見た目とのギャップが激しくて…

 
いつの間にかすっかり馴染んでしまった。

 
彼女は今流行りの動画投稿者というやつで、
主にメイクやヘアアレンジ、ファッションコーディネートを投稿している。
調べてみると、一部では結構な有名人でファンも多いようだ。

 
自宅で撮影しているらしく、最近このあたりに引っ越してきたらしい。
 

いつも隙がないお人形さんのような彼女と、平気でTシャツ+ジーパンにスッピンで出歩く私は一見正反対だけれど、不思議と気が合ってすぐに仲良くなった。

 
私はスタジオで働いていて、撮影や動画編集なんかもやっているから

「じゃあ私がアシスタントやってあげよっか?なんだか楽しそうだし」

なんて、彼女の家に通うようになったんだけど…

 
その部屋はとにかくピンク!

 
家具だけじゃなく、元の壁紙やキッチンなんかもピンク色。
よくここまで揃えたなー、っていう感じ。
 

寝室の一角が撮影スペースになっており、ピンクの壁紙に白いソファ
パステルカラーのクッションに、キラキラの照明。

あまりのこだわりっぷりに、なんだか感心してしまった。
 

彼女の雰囲気にぴったりなのがまた…何ともいえない。
 

色使い以外にも、しっかりした独立洗面台があったり
沢山の服や道具を置くためのゆとりもあって
確かにここなら撮影もやりやすそうだ。

 
 
そして、通ううちに一つのことに気がついた。

 
彼女はあんなに手先が器用なのに、家事全般が苦手なのだ!

 
立派なキッチンがあるのに、冷蔵庫にはレトルト食品や
スーパーのお惣菜の残りものばっかり。

 
約10畳のLDKも物が雑多に散らばっていて、
整っているのは撮影に使う一角だけという有様。

 
ついほうっておけずに、食事を作ったり片づけをしたり
なんてことを続けてもうすぐ一年が経とうとしている。

 
その間に、彼女は本を出版したり、雑誌の取材やテレビに出演したり
一般の人にもずいぶん知られるようになった。

 
世間での彼女のイメージは、可愛くてオシャレで美容にストイック。

 
でも、実はガサツで片づけができないズボラ女子なんて…
バレたら世の中の男子諸君がガッカリするに違いない。

 
そんな彼女のギャップを知っている、ということに優越感を感じちゃって
ついズルズルとお世話係を続けている。

 
もうすぐ、またあの暑い夏が訪れようとしているけれど、
なんだかんだでこの生活はやめられそうにない。
 

 
世田谷区若林2丁目28-24
ロワイヤル三軒茶屋
ALIVE賃貸:http://aalive.jp/public/detail/10352.html

■あの頃も、これからも。■ ロワイヤル三軒茶屋  ずっと未来を駆けることばかり考えてきたせいだろうか。リノベーションと聞いたときは、「どうせ中古だ」という思いが少なからずあった。でも、見るだけ見てみようと思えたのは、それが、三軒茶屋ー通称・...
14/04/2015

■あの頃も、これからも。■ ロワイヤル三軒茶屋

 
 
ずっと未来を駆けることばかり考えてきたせいだろうか。

リノベーションと聞いたときは、「どうせ中古だ」という思いが少なからずあった。

でも、見るだけ見てみようと思えたのは、それが、三軒茶屋ー通称・三茶ーの部屋だったからに他ならない。

 
 

三茶は私にとって特別な街だ。

渋谷の美容学校に通っていた十ウン年前の二年間、同郷の悪友と同居していた思い出の街なのだ。

同居人と時間が合うときにはシアタートラムによく芝居を観に行ったし、劇場の真ん前にあった喫煙所で煙草も吸えないのに、芸能人の一人も来ないかな、と淡い期待を抱きながらたむろしたりもした。

失恋すれば、路地に密集している小さな店で飲んだり、夜道をひたすら散歩したりした。
学校内のコンテストで入賞したり、恋人が出来たときには大盤振る舞いと称して、同居人と銭湯に行き、湯銭をおごった。

この街は青春時代そのものと言っても過言ではない。

 
 

学校を卒業したのを機に同居人とも離れ、勤め先のサロン近くであることを唯一の条件として転々としてきた。
住んだ街はいずれも流行の最先端の街であり、人で賑わう街だった。

賑やかさ、華やかさは気が紛れていい。
孤独や忙しさ、焦りから自然と目を背けられる。

と、馴染みのバーでクダを巻いていたら、飲み仲間である不動産屋の女性社長から、今の部屋を勧められたというわけだ。

 
「紛らわしたり、目を背けたり、ごまかしてばかりなのは素敵じゃなくない?」と。
 

全然乗り気ではなかったが、乗りかかった船かもしれないし、乗りかかってる程度なら降りちゃえば良いしと、休日に三茶へ連れてこられたのだ。
 
 

三階の角部屋、南と東に窓がある。ちょっとアンティーク風で白を基調にした爽やかな空間だった。

お気に入りのポストカードを額に入れて掛ければ、おしゃれなギャラリーっぽく見せることもできそう。

高いところのガラス窓から入り込む柔らかい光に心がほぐされて行く感じが心地良い。

南向きに設えたカウンターでキャンドルに明りを灯しながらお茶をするイメージが浮かんだ。

お風呂ものんびり足を伸ばして入れる浴槽を備えている。
LUSHのバスボム初体験しちゃおうかな。

 
駅から少し離れた住宅街にあるのもなんとなく気に入った。

この距離なら毎日駅までいろんなルートを開拓しながら散歩ができる。
自転車通勤も楽しそうだ。

たまには三茶ではなく、西太子堂の駅から電車に乗って、一駅だけ世田谷線を利用しても良いかも。

帰りにはすっかり、乗りかかった船の舵をきっていた。

 
 

引っ越してきて二週間ほど経ち、三茶で生活する感覚を取り戻してきたその日。

仕事の撮影が早めに終わり、南青山の職場から三茶の駅前に帰ってきたのはまだ日が落ちきらない時間だった。

小腹が空いていたので、アジア屋台FOで鶏肉のフォーを食す。明日は休みだし、と、銭湯に行ってみることにした。
 

三茶付近は銭湯密集エリアだ。

家のごく近所にもひとつあるが、今日はそこではなく、駅近くの三角地帯にある千代の湯に。

昔ながらのその姿、高く聳える煙突は街や人の歴史をどれほど見てきたのだろう。
その年季に敬意を払いつつ、浴場に入る。

そうそうこの感じ。細胞がこの銭湯を思い出して行く感じがする。

体を流して入浴すると「!!」熱め。いや、熱い。しかしこれぞ風呂である。
入ったり縁に腰掛けたりを細かく繰り返す私に横から声がかかる。
 

「あれ?智子?」
 

声の方を向くとそこにはかつての同居人の姿があった。
 

「久美!…ちょっと最後にヘアカラーしたのいつよ?伸び過ぎじゃない?」
 

「ひっさびさの再会で開口一番それ?!」
 

かしましく夜は更ける。
再会を祝してすずらん通りの味とめでカンパイするのだ。

 
Written by 細野 舞
~東京妄想不動産フレンズ 

世田谷区若林2丁目28-24
ロワイヤル三軒茶屋

ALIVE賃貸:http://aalive.jp/public/detail/10353.html

■光の在処■ サングラータ広尾斜めになった、天井の柱。一部だけ違う柄の壁紙。すこし歪なこの部屋は、太陽の光によく映える。今日は鰹の和風サラダに、冷奴、オクラの胡麻和えなめことわかめの味噌汁・・・ご飯はちりめんじゃこ!でも、これだと塩分多め?...
08/08/2014

■光の在処■ サングラータ広尾

斜めになった、天井の柱。
一部だけ違う柄の壁紙。
すこし歪なこの部屋は、太陽の光によく映える。

今日は鰹の和風サラダに、冷奴、オクラの胡麻和え
なめことわかめの味噌汁・・・ご飯はちりめんじゃこ!
でも、これだと塩分多め?
手間がかかるけど、ドレッシングを手作りにしようかな。

さて、彼が帰ってくるまで1時間。
今日も腕によりをかけて、美味しい餌を用意するか!

「最近若い男を飼いはじめたんだって?」

3ヶ月前に別れた恋人からの電話。
売れっ子デザイナーの元彼は、こだわりが強くて
レストラン・ファッション・インテリア
何でも自分好みじゃないと気に食わない人だった。

最初は彼のセンスの良さ、感性に惹かれていたけど
だんだん付いていけないと思うことが増えていった。

マイペースな彼と一緒にいるのは息苦しかった。

結局別れて、その後すぐに出会ったのが今の彼。
恋人というより・・・・・ヒモ?
とにかく同じマンションで生活している。

彼はボクサー。
もともとはサラリーマンをしていたけど
昔からの夢を諦めきれずに格闘の世界に飛び込んだ。

なかなか結果が出ずに、そろそろ年齢的にも
最後のチャンスかも、なんて。
本当にストイックにトレーニングに励んでいる。

朝はランニング・筋トレ。
昼と夜はアルバイト。
空き時間はジムに行って練習の日々。

彼がアルバイトをしている飲み屋の客として
仕事や恋愛の愚痴を聞いてもらっていたのがきっかけで
今の関係になった。

今までは全然関わりのなかったタイプで
発言や、突飛な行動に驚かされたりもするけど
それがなんだか新鮮!

何より、私が作った食事を本当に美味しそうに食べてくれる。
笑顔も可愛いし、夢に向かってひたすら練習に
打ち込む彼は本当にキラキラしてて。
年下の男と付き合う人の気持ち、今なら分かる。

友達には、随分呆れられちゃったけど
でも、これが今の私の癒し!

管理職になって、責任は重くなったけど時間に余裕ができた。
その分の時間を今は彼のために使ってる。

この部屋に引越しを決めたのも
ほとんど彼のためと言ってもいい。

彼が朝スッキリ目覚められるような
南向きの日当たりのいい部屋。
ベッドも、ゆっくり眠れるように
クイーンサイズなんて買っちゃった!

おかげで私も早起きになって
たまに有栖川公園までランニングに付き合っている。

栄養たっぷりの献立を考えて
美味しい料理を作るための3口コンロ。
今ではレパートリーに物足りなさを感じて
近所の広尾料理倶楽部に通っている。

食材だって良いものを沢山揃えたいから
スーパーは肉・魚・野菜の品ぞろえが豊富な
ライフに自転車で買い出し。
休日が買い出しと献立作りで終わってしまうことだってしばしば。

自分がこんなに人に尽くせる人間になれるなんて
想像したこともなかった。

しかもたった一人の
年下の男の子の影響なんて!

彼と出会ってから、自分の世界が劇的に変わったと思う。
まさに私の太陽!って感じかな。

「そうなの。とってもいい子よ。」

「ふーん。ひとまわりも年上のおばさんなんて、そのうち捨てられるんじゃない?」

「残念ね。捨てられるんじゃなくて私が捨てるのよ。
もう散歩から帰ってくるころだから、さようなら。」

・・・そんなこと、最初からわかってるってーの!
それにギリギリひとまわりは離れてないし!

「ただいま!」

「おかえり!先にお風呂入っておいでー」

オシャレなデザイナーズマンションには不釣り合いな
汗だくの彼が帰ってくる。

料理ももう完成間近。
足を伸ばしてゆっくりくつろぐ私と違って
彼の入浴はまさにカラスの行水ってぐらいあっという間だから
テーブルに並べておいてもいいだろう。

いつまで続くかわからないこの関係。
彼の夢がかなっても、隣にいるのは私よりずっと若くて可愛いモデルかアイドルかもしれない。

そしたら、きっとすごく惨めな気分になるのかな。
若い男に利用された、かわいそうなおばさん?

やめやめ!
そんなこと考えたってしょうがないじゃん。

今は、ただ何も考えずにこの心地のいい関係にひたっていよう。
太陽が沈む、そのときまで。

渋谷区広尾1丁目5-13
サングラータ広尾

ALIVE賃貸:http://aalive.jp/public/detail/9767.html
Hiroo Rent:http://reblo.net/aalive/build-1220634.html

■地に足の着いた生活、大切なものに気づくとき■ 広尾の駅から地上に出る。「今日は、あついね!」「そうだね。…ナショナル行く?」「いく!」娘のいまのお気に入りは駅近くのスーパー、ナショナルAZABU。海外の食品や変わり種の野菜がひしめく店内を...
02/08/2014

■地に足の着いた生活、大切なものに気づくとき■ 

広尾の駅から地上に出る。

「今日は、あついね!」

「そうだね。…ナショナル行く?」

「いく!」

娘のいまのお気に入りは駅近くのスーパー、ナショナルAZABU。
海外の食品や変わり種の野菜がひしめく店内を涼みながら見て回るのが楽しいらしい。

「パパこれは?」

「七面鳥だね。クリスマスみたいなおめでたいときにアメリカで食べるんだ。」

「おめでたいの?買う?」

「買わないよ」

他愛もない会話をしながら、
僕はビール、娘はジュースを片手に炎天下の帰り道を行く。

広尾駅を通り、商店街を抜け、
坂を上って上って、歩いて。

娘は本当によくしゃべる。
塾で一緒の子が着ている私学の制服が可愛くて羨ましいことや、
最近流行りのテレビ番組の話、
ママに叱られたこと、
今度友達を呼んでお誕生日パーティをすること。

とめどがない。

「あっ」

娘が花屋の前で立ち止まる。
近所に花屋なんてあったのか。

行きは恵比寿に出る事が多いし、
帰りはタクシーで半分寝落ちしながら帰ってくるのが常で、全く気がつかなかった。

「お花、買っていくでしょ?」

娘がさも当然のことのようにいう。
女の子、なんだなあ。と微笑ましく頷くと、
不平そうに

「今日、ママのお誕生日だよ。」

はっとした。

妻の誕生日を忘れていたこと、
そして、娘がちゃんと成長していること。

でもきっと今朝の感じだと、
妻自身も今日が誕生日であることを忘れている。

妻がキュレーターを務める展覧会が一昨日初日を迎えたということもあり、
妻はここ数週間、朝は早く夜は遅く、まともに顔を合わせていなかった。

何か贈り物をするのは今度にして、
今日はどこかへおいしいものでも食べに行こう。

娘セレクトで大きな花束をこしらえてもらい、急ぎ足で家へ帰る。

緑に囲まれたその一角は僕と同じく弁護士をしていた祖父の
軽井沢にあった別荘を彷彿とさせる。

都心のマンションというと高層のビルが多い。

高層階に住まうことをステイタスに感じる人は多いが、
都会的であるが翻せば無機質なそれに、
僕はどうも魅力を感じられず、
バリバリ働いて同世代の数倍の収入を得るようになっても、
結婚して子供が生まれても、ある意味で生活には不釣り合いな家を選り好んで住んできた。

そんなとき、妻に連れてこられたのがこのマンションの内覧会だった。

駅からは少し歩くが、周りの治安は悪くなさそうだし、
ご近所には下町風情の家が並び、なにより緑が気持ちいい。

なんとなくだが、そこはかとない居心地のよさを感じて、ここに決めた。

エントランスを入るとそこかしこに絵画やオブジェが並ぶ。
現代美術を好む妻はしばしば、それらを見てぶつぶついっているが、
なんだかんだ言ってもその空間が気に入っているようで、
そこを通るときはうきうきとしたような表情を見せるのだった。

それに、入ってすぐに眼前に広がるガラス越しの和風の庭園も、
しばしば仕事でこわばった僕の気持ちをほぐしてくれる。

習慣で宅配ボックスを見ると、大きな荷物が届いていた。

「なんだろう?大きいけど軽い。」

娘は大きな花束を抱え、僕は段ボールを抱え。
部屋に辿り着き、段ボールを開けてみると、そこには娘の水着が入っていた。
妻が通販で買ったのだろう。

「お庭でプール、しよっか?」

この部屋のリビングダイニングには大きな窓があって、
そこからこじんまりとした専用庭が見えるようになっている。

娘ははしゃぎながら水着に着替え、
幼稚園年中のときに買った子供用プールを引っ張りだしてきたものの、
庭には水道がないのでキッチンか風呂場から水を運んでこねば。

使ってないタンクがあったはずだから…と思案していると、
いつの間にか娘はじょうろで庭木に水をやったり、その水を自ら浴びたりしている。

その、美しさときたら。
あと何度こんな姿を見られるのだろう。

きっとあっという間にすぎて行くんだろう、彼女が大人になるまでの時間は。

「ただいま~、あれ、水着開けちゃったの~?」

妻のその声で我に返った。

「おかえり」

「ママ!おかえり~!!」

そんな、夏の日の午後。

Written by 細野 舞
~東京妄想不動産フレンズ

渋谷区広尾3丁目12-7
ザ・パークハウス広尾羽澤

ALIVE賃貸:http://aalive.jp/public/detail/9754.html
Hiroo Rent:http://reblo.net/aalive/build-1196604.html

■結婚は50代から■「そろそろ一緒に住まない?」そう彼から言われた時は、素直にいいかもしれないと思えたの。50代にに入って、定住するのは日本かなと思い始めてきたところだった。何より治安がいいし、宗教上の問題に煩わされる事も殆どない。金融関係...
01/03/2014

■結婚は50代から■

「そろそろ一緒に住まない?」

そう彼から言われた時は、素直にいいかもしれないと思えたの。

50代にに入って、定住するのは日本かなと思い始めてきたところだった。
何より治安がいいし、宗教上の問題に煩わされる事も殆どない。

金融関係の仕事で世界のあちこちに住んで、息子はニューヨークで生まれた。
時代が味方をしてくれてそれなりの収入も得られて、物価の高いニュヨークだが快適だった。

プロポーズをしてくれたのは息子の生物学上の父親。

若い頃、勢いで子供を作ってしまったけれど、
結婚する気にはなれなかった。

日本の家制度の残るしがらみに縛られたくなかったし、
自分のキャリアを(息子の)父親に振り回されるのも嫌だった。

恋はたくさんしたけれど、心の中にある「大切な人」は、
案外ひとりなのかもしれない。

「Mom、結婚するの?」

「うん、いいかな。 家族のリユニオンね。」

彼が選んだ住まいは、便利な都心にありながら
家族が住まうには最適な造りだった。

キッチンは、什器がしっかりしたものだし冷蔵庫も嬉しい容量。

何よりバスルームは外と繋がった解放感があるし、
シャワールームも別途設置されているのも気に入ってしまった。

ストレージの容量も充分で、全体に奇をてらったデザインではなくて、
家族が安らげる落ち着いた佇まいになっている。

戸数の少ない低層のマンションなのも有り難い。

生活するには便利な立地、徒歩や自転車でどこにでも行ける。

「気に入ってくれた? 新婚の住まいは」

「ええ、私たちの結婚は、ここから始まるのね。」

長い間放浪して、辿り着いたのが彼と、この場所。
この結婚は長くなりそう、きっと。

Written by mariko saito
~東京妄想不動産フレンズ

港区六本木5-13-28
ROPPONGI PLACID
http://aalive.jp/public/detail/09568.html

あけましておめでとうございます!昨年は、妄想フレンドの方のユニークな作品が発表され、私も刺激になる年でした。不動産と小説。現実の生活と妄想。ファンの方やライターの方に出会えて、私もお仕事の楽しみが増えました。今年は更に作品を増やして、その作...
01/01/2014

あけましておめでとうございます!

昨年は、妄想フレンドの方のユニークな作品が発表され、
私も刺激になる年でした。

不動産と小説。
現実の生活と妄想。

ファンの方やライターの方に出会えて、
私もお仕事の楽しみが増えました。

今年は更に作品を増やして、
その作品を読んだ人が

この街に住みたい!
この部屋に住んでみようかな。

と思っていただけるようなヒントができると
もっと嬉しいです!

ライターになって下さる
ライターの妄想フレンドの方、募集致します!

更に広がりのある1年でありますように!

今年も”東京妄想不動産”を[^ェ^]
よろしくお願いいたします!

■ 自由を買う。■その夜は隣の女の溜息がうるさく感じた。週に一度の休み。いつものバー。一軒目に入る前にコンビニで買った煙草が残り5本になっていて、もう何軒目か分からないくらいには酔っていた。この店に辿り着く道中のことはあまり覚えていないが、...
27/12/2013

■ 自由を買う。■

その夜は隣の女の溜息がうるさく感じた。

週に一度の休み。
いつものバー。

一軒目に入る前にコンビニで買った煙草が残り5本になっていて、
もう何軒目か分からないくらいには酔っていた。

この店に辿り着く道中のことはあまり覚えていないが、
酔っぱらって歩いていても浮かない、それが六本木のいいところだ。
俺にとっては。

聞くともなしに聞いていると、彼女もこの店の常連らしい。
確かに見覚えのある顔のような気がする。

彼氏に振られたそうだ。
というか同棲していた彼氏が出て行ってしまったという。
目覚めたら荷物もろともいなくなってしまっていたのだと。

こういうとき、女って泣かないか?フツー。
水割り飲みながら溜息吐いてるなんて、なんか、おっさんかよ。
いいけどさ。

彼女がトイレに立ったとき、その顔を見て一瞬息が止まった。

地元の悪友のねーちゃんだった。

「ぇ、みーさま??」

「え?…たかぴこ??…ちょっと待ってトイレ行ってから!」

結局、彼女の家で飲み直すことになった。

ドンキで酒とつまみと煙草を買って麻布十番へと坂を下る。

インテリアショップLIVING MOTIFの暗くなった店内にはクリスマスの装飾がきらめき、
スポーツバーのHOBGOBLINでは今日もラグビーかサッカーの中継をしていたのだろう、
通りのこちら側まで熱気の余韻が風に乗って感じられた。

路地にそびえるL字型のマンション、
それが彼女―みゆきさまのマンションであった。

「いーとこ住んでるのねえ。」

「たかぴこも十番でしょ。一緒じゃん。」

「いや、最寄りは一緒でもさ。家賃8万だし。」

「やっす!」

「ちなみにここいくらよ?」

「んー、だいたい40。」

「俺の月収こえとるわ(笑)」

14階建ての14階に到着。
エレベータを降りて目の前のシャレた扉を開けると、大きくないけどガタイのいい白いワンコが駆け寄ってきた。

「あ、犬へいき?」

「平気平気!へー、ブルテリア?」

「そう、よく知ってるね。」

「名前は?」

「コユキ。小さいみゆきでコユキ。」

「・・・女の子?」

「オス。」

「・・・一周してかっこいいじゃん。」

「まーでも彼氏がコユキまで連れてかなくて良かったわ。」

傷心の飼い主が帰ってくるのを待ちわびていたのだろう。
みゆきがビールのプルトップをぷしゅりとやるとすぐに、コユキはみゆきのそばで寝息を立て始めた。

「いやでも、最初誰だか分かんなかったよ。」

「ん?」

「表情険しすぎて(笑)」

それも仕方ない。

毎日10時間は厨房に立って、休みの日にもひとり飲み潰れることくらいしかすることがない男の表情が柔和だったら、それはもう悟りを開いているレベルだ。

「みーさまはいま何の仕事してるの?
こんないい、都会の一等地のマンションなんてなかなか住めないでしょ。」

「ん〜まあね。…映像関係ってとこかな。
でも本書いたり、いろいろなんかこうプロデュースとかもしてる。」

「へぇ、すごいじゃん。映画?」

「映画じゃないけど、まあうん。」

「ふうん。」

「たかぴこは?何の仕事してるの?」

「俺はまあ、料理人てとこかな」

「まじか!うちで飯炊きやってよ!」

「やだよ(笑)何だ飯炊きって!
そんなひまじゃねーし、てかひまじゃねーし!」

「いいじゃん!ここで会ったのもなんかの縁だし。
・・・そうだ、彼氏が住んでた4畳半の部屋使っていいよ。
そうだな、うん、5万で貸す!」

「家賃とるんかい(笑)」

とかなんとかいいつつ、自分の好きな料理を作って、犬がいて、
気楽な友達の気楽なねーちゃんと高層マンションの最上階に住めるなんて結構いいかもな

とか酔った頭で考えていた。
俺もまだ若いんだし。

それから二ヶ月。

近所の犬たちの散歩をする仕事と、コユキの遊び相手と、みーさまの食事係をする四畳半暮らしの日々もそろそろひと月になる。

珍しくみーさまが休みだったので、ふたり一緒にコユキの動物病院に、定期検診にきた。

「…ちょおっと体重増えてますねぇ〜。」

コユキはこの獣医さんが好きらしく、始終甘えている。
そして目が合うとすこし気恥ずかしそうな顔。

「やっぱりたかぴこ、おやつあげ過ぎなんだよ。」

「だって近所に犬のおやつ屋さんいくつもあるんだもん」

「だもんじゃないよ。コユキの寿命縮んだらどうしてくれんのよ。
ね〜えコユキ?」

コユキは獣医さんに夢中であんまり話を聞いていない。

「でもコユキちゃん、おとうさん来てからいいお顔になりましたよね。
さっき病院入ってきたとき、最初分からなかったですもん。
おかあさんが楽しそうだとコユキちゃんもうれしいんでしょうね」

おとうさんおかあさん、と言われてみーさまと一瞬顔を見合わせた。

そういえば十日ほど煙草を吸っていない自分にふと気づいた。

Written by細野 舞
~東京妄想不動産フレンズ

アルビン六本木レジデンス
http://aalive.jp/public/detail/09380.html

昨日、今井城学園のクリスマス会に行ってきました。今年で3年目になります。今年は弊社で募金させていただきました皆様からのお心を届けに行くことが出来ました。お正月に遊ぶ、ボードゲームやTVゲームなどを購入してもらうことになりました。楽しく過ごし...
24/12/2013

昨日、今井城学園のクリスマス会に行ってきました。

今年で3年目になります。

今年は弊社で募金させていただきました
皆様からのお心を届けに行くことが出来ました。

お正月に遊ぶ、ボードゲームやTVゲームなどを購入
してもらうことになりました。

楽しく過ごしてくれるといいなと思います。
ご協力頂いた方々、ありがとうございます!


今井城学園は私の知り合いの池田さんのお祖父様が戦争孤児
を預かるところから始めた孤児院だそうです。

今は、孤児といって、実際の親御さんがいないというより、
虐待によって帰る家が無い状態のお子さんが多いとお聞きします。

色々と複雑な社会の産物かもしれないけど。



私も自分の子供を育てているときは大変でした。

幼稚園の園長先生が
「あなただったらこの子を育てられる。
そう、神様が思ってお授けになりました。」

というお話を聞いて、
「私には、本当に手に余るのに、、、、、」

って、途方に暮れたり。

でも、
「子供はあなただけの子供ではなく、社会全体の子供です。」
って。

なので、「園も社会もあなたの子供を育てるのですよ」
って、言われて、少し肩の荷が軽くなった。

母親だから頑張らなければいけない。
でも、
その頑張っている私に優しくしてくれる人が欲しかったんだと思う。


今の私にできること。

子どもたちに、あなた達の成長を楽しみにしている人がいるということ。
あなた達を愛している、気にかけている人がいることを伝えたい。


普通の家族とは違うかもしれないけど、
一緒にご飯食べて、一緒にゲームして過ごす人たちは家族だよ。
家族の形態も、色々変わってきてるからね。
今、何気なく共有している時間。
大人になって、ずっと経ってから、良かったなって、きっと思うから。


1年に1度のこの行事に参加するメンバーの方とも、
だんだん顔見知りになってきて。
なんだか、法事みたいね、って。

一つのことを通して、
それぞれができることをする。
そんな仲間の方が出来たことも嬉しいです!

あなた達のお陰です。

あなた達の存在は素晴らしい!

毎年、どんどん成長していく姿を見ながら、
心のなかにそう思っていました。

来年もまた、この気持を伝えに行くことを楽しみにしています!

29/11/2013

■ 東京妄想不動産ファンの集い 12/3 日曜日のお昼に開催します ■

      ~~~飛び入り参加受付中です!~~~


東京妄想不動産のスタートより約1年半、
色々なメディアでも取り上げて頂き、お陰様でいいねの数も500を越えました!

いつも記事を書いてくださる妄想フレンドの皆様、
そして作品を読んでくださり、いいねやコメントをくださるファンの皆様の交流の場として、第2回 東京妄想不動産ファンの集いを開催致します!

第1回は、フレンドさんと、約同数のファンの方々で、
都心の中で伝統と緑を感じられる増上寺の散策と、1軒屋ダイニングでのランチを楽しみながら、妄想不動産について語り合いました!

第2回の今回は、1回目と趣向を変え、
東京都指定名勝である「清澄庭園」内、『涼亭』にて開催いたします。

この涼亭という建物、庭園内の池に浮かぶ東屋、といった趣のある建物。※暖房完備です!
http://teien.tokyo-park.or.jp/contents/facilities033.html
今回はこちらを貸し切りにして、窓の外に紅葉を眺めつつ、お酒とお食事、そして妄想不動産を通じて繋がった新しい方々との交流を楽しんで頂ければと思います。

是非、ご友人お誘い合わせの上ご参加ください!

12月1日 13:30~ 
会費 3000円
各自入園料はお支払いになって、いらしてください。
150円


「涼亭」での開始は13:30~

ですが、先に庭園の中を散策されていても大丈夫です。

当日はランチとおいしいワインをご用意いたたします。

きっと、紅葉が美しいと思います。
心和む都心のオアシスで一緒にお話ししませんか?

不動産を物件概要だけでは伝わらない、
そこでの暮らしや暮らす人の思いを小説仕立てでご紹介していました。

第1回目の時に、どんなストーリーが良い?

という問いかけに、
やけに”不倫”で盛り上がっていました。

というか、愛のある暮らしが良いのだということなのだと
思いました。

今回は、実際にいくつかの物件をご用意しました。

同じお部屋でも、
それを見る人によってストーリーが違うはずなので、

それを題材に、

「愛のある暮らし」

について、妄想+語っていただこうと思います。


自分で作るストーリーも面白いですけど、
ほかの方が作るストーリーも面白いですよね。




お申し込みは、こちらのイベントページへの参加ボタンクリック、
もしくは下記連絡先までご連絡下さい。
E-mail: [email protected]
TEL: 0120-801-278

■離れたくない家 離れられないひと■そうね、リビングのカーテンは落ち着いたブラウンかしら?でも爽やかなグリーンも捨てがたいし・・・ソファはやっぱり、カッシーナ?インテリア雑誌をめくるたび胸の中に膨らんでいた新居への期待は、夫の言葉にシャボン...
12/11/2013

■離れたくない家 離れられないひと■

そうね、リビングのカーテンは落ち着いたブラウンかしら?
でも爽やかなグリーンも捨てがたいし・・・
ソファはやっぱり、カッシーナ?

インテリア雑誌をめくるたび胸の中に膨らんでいた新居への期待は、
夫の言葉にシャボン玉のようにあっけなくはじけた。

「・・・ホッカイドウ??」

「ごめん、指導教授からの話だからどうしても断れなくて・・・。
 でも、ついてきてほしい。」

「だって、私東京以外住んだことないし!そんな遠い所・・・
 家だって、買ったばかりじゃない!」

「・・・」

夫は大学院を修了してから東京の大学に職を得てもう6年。
私は独身時代から勤めた会社も出産を機に退職して、
今は育児と家事、
そしてちょっとした翻訳バイトをして過ごす日々。

結婚前から2人で麻布界隈に住んでいた。

家からの徒歩圏内に雑誌で紹介されているようなお店がたくさん。
子供の教育機関だって日本では最高水準。

そんな環境を当たり前と思って暮らしてた。

ある日、娘と近所を散歩している時にみつけた「オープンルーム」の旗。
造りはよさそうだけど古い外観にあまり期待もせずに、
軽い気持ちで入ってみた。


その中は、目を疑うくらい素敵で。


無垢材のフローリング、ゆとりのある間取り、大きな収納、
オープンカウンターのキッチン。

ヘタな新築マンションよりよほど高級感と重厚感があって、
それまで見たどんなマンションより、いいと思った。

お部屋全体が、輝いて見えた。

翌日夫と一緒に再内見して、一晩家族会議して、すぐ決めた。

決済の日に、不動産会社の社長さんが連れて行ってくれた
近くの中華「真不同」
お料理はもちろん龜出し紹興酒が本当に美味しくて。

夫と2人、こんないいレストランが近くにあったら大変ね、なんて
夢が現実になっていく過程をひとつひとつ楽しんでいた。

そんな折の、今回の転勤。
はじめはとっても不安で嫌で、この土地を離れたくなかった。

でもね、思ったの。
じゃぁ、夫を一人行かせて、私だけこのマンションに住む?

それは、出来ない。したくない。

娘にはパパが必要だと思うし、私だって一緒に居たいもの。
それに慣れない土地で新しい職場に移って大変な彼を支えるのは、
やっぱり私だから。

おいしいレストランが近くに無くたって、
おいしい食材がたくさんあるんだからおうちで作ればいいよね。

子供の教育だって、公共の教育機関で不足があれば
自分たちでやればいい。

買ったマンションに住めないのは残念だけど、
買ったときの不動産屋さんに聞いたら
このマンションなら綺麗だからすぐ貸せるだろうって。

しばらくお金のかからない所に住んで、賃料収入を得る生活も、
いいかも?

・・・でも。
やっぱり近い将来東京に戻ってこの素敵な家に住めますように。

夢の実現は、もう少し先延ばしね。

東京都港区西麻布4-18-10
ステラサイト西麻布

http://www.preciouslife.jp/cgi-dir/01realsys/na_detail.cgi?id=201310200012&page=0

■	彼と別れた理由 ■どんなに素敵な彼が出来ても、結婚を考えていても、子供を産めるリミットを指摘されても、働かない自分を、わたしは想像できない。40歳を前にして長く付き合っていた彼と別れた理由は、仕事をもっとさせてほしいという理由だった。直...
12/08/2013

■ 彼と別れた理由 ■

どんなに素敵な彼が出来ても、
結婚を考えていても、
子供を産めるリミットを指摘されても、

働かない自分を、わたしは想像できない。


40歳を前にして長く付き合っていた彼と別れた理由は、
仕事をもっとさせてほしいという理由だった。

直接口には出さなかったが、
時には電話も取らないくらい仕事に没頭するわたしに
不満を持っていたことは感じていた。

わがままなこともわかっているが、
我慢をしてあわせることが幸せなのか?
という疑問は彼との将来を考えることを不安にさせた。

『我慢をして手に入る幸せもあるだろう』

けれど、いつか押さえていたものがあふれだしてしまうことが怖かった。

こんな自分に正直にいられる環境が
ここに越してきて自然に作られていたんだと思う。


この家を選んだ時、選択のポイントは【仕事に便利】ということだった。

恵比寿、表参道から歩いて15分、
都心だけど周りは学校やお寺と落ち着いた環境だ。

ただ仕事を余裕を持ってできるようにと選んだ環境が
自然にプライベートを充実させていたことにも気づく。


女同士飲めば必ず彼か旦那か男か、いずれかの話になるのはお約束。
ひとまわりは余裕で違う今の彼にプロポーズされた一昨日の話を肴に、
今日は思いっきり午前さまだ。

『無理せず歩みよれる関係でいたいよね』

前の彼もよくしっている女友達だからそんなことを言ったのだろう。


仕事を忘れて眠りに没頭したいと、
ベッドのみしか置いていない寝室に向かい横になる。

明日はお休みだから料理でもしながらゆっくりしながら考えればいい。

2人で立ってもまだゆとりがあるキッチンはここを選んだ決め手だった。
この居心地の良い空間がくれる安心感は、
きっとこの先のわたしを楽しい生活へ導いてくれる。

わたしは妄想しながらゆっくりと眠りへと落ちていった。

Written by kaede
 ~東京妄想不動産フレンド

渋谷区東2-6-1
ガーデン渋谷氷川

http://aalive.jp/public/detail/7975.html

■ お城のような、バーのような。 ■23時を少し回った頃。独身貴族のご帰城である。最近引っ越してきたこのマンションはまさに城と呼ぶにふさわしい。スタイリッシュな外観、エントランスを入ってすぐのベンチ、各階の廊下はカーペット敷き。城かホテルか...
06/08/2013

■ お城のような、バーのような。 ■


23時を少し回った頃。
独身貴族のご帰城である。

最近引っ越してきたこのマンションはまさに城と呼ぶにふさわしい。

スタイリッシュな外観、エントランスを入ってすぐのベンチ、
各階の廊下はカーペット敷き。

城かホテルか見紛うような高貴さに一目惚れした。


エントランスを入り、エレベータに乗って自分の部屋の階まで上がる。

と、隣の部屋の扉の前でうずくまる人影があった。

酔っぱらってるのかな?

声をかけるか迷いながらその前を過ぎかけると、不意に彼女が顔を上げた。

「カギなくしちゃったみたい・・・」

男というのは頼られるのにはどうも弱いもので、その頼りない顔を見たら、

「良かったらうちで一服してきます?」

という台詞が口をついて出ていた。


「あたしの部屋と全然ちが~う!きれーーーい!わー生活感ないね~!」

さっきまでの子犬のような表情が嘘のようで、急にはしゃぐ彼女。

「コーヒー淹れますから・・・ちょっと!靴は入り口で脱いでくださいよ!」

「へ?」

「ほら靴!」

「あ、ごめんなさい。今朝までニューヨークだったの。」

「だからって靴!・・・もう。」

「ごめんなさ~い・・・」

「・・・ニューヨークは?出張かなにか?」

「演奏旅行でね。」

ふと彼女の荷物に目をやると、大きめのスーツケースの隣にヴァイオリンケースがあった。

「ヴァイオリン?」

「そう。・・・あ。」

ヴァイオリンケースの中についているポケットをあさり、

「カギ、あった。」

と、少しばつが悪そうに笑った。

キッチンで、やかんがピーッと鳴った。


「お詫びに一曲聴いてもらえませんか?」

「お詫びなんて別に…」

「じゃあこの、コーヒー代として。」

「インスタントコーヒーですよ?」

と言ってるうちに、髪をまとめ、ケースからヴァイオリンを取り出す。

「練習用のエレキだからアコースティックには劣ると思うけど
 ・・・はい、ヘッドホン」

コードレスのヘッドホンを手渡した彼女が
一瞬すっと息を吸いこんで奏で始めたのは
エディット・ピアフ『愛の讃歌』をジャズ風にしたものだった。

間接照明と窓から見える赤坂の案外雑多な景色が、
途端、僕の城を夜のニューヨークのジャズバーに姿を変える。


演奏が終わると思わず拍手をしていた。

「すごい・・・いまの本当に君が演奏してたんだよね?」

「目の前で見てたでしょ?」

あっけにとられながらも、温くなったコーヒーをすする僕を視界の端で捉えながら、
ヴァイオリンをしまう彼女。

「・・・ひさしぶりに少ない人の前で演奏できて、よかった。ありがとう。
 それじゃ、お邪魔しました!」

「あ・・・また、コーヒー、飲みにきてよ。今度はあのー・・・上島珈琲で豆買っとくんで。」

「ありがとう、おやすみなさい。」

・・・待てよ。

一階のエントランス前でカギ出すんだから、そうそう無くすわけないじゃないか。

ていうか、ヴァイオリンケースの中のポケットにカギ入れるって不自然だろ・・・?

と、首を傾げたのは、夜食にとつくり始めた肉野菜炒めのピーマンを刻み始めたころであった。


Written by 細野 舞
 ~東京妄想不動産フレンド

港区赤坂6-12-17
パークハビオ赤坂

http://aalive.jp/public/detail/8836.html

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